きみぶん演劇祭 ~演劇部~

10月12日(土)、13日(日)の2日間、高校生たちの演劇『きみぶん演劇祭 chapter.21』が、君津市民文化ホール大ホールにて開催されました。本校演劇部が、13日の最初のステージに出演。見事な演技で来場者を魅了しました。

作品のタイトルは、『今日の献立は、』。生徒会提供のお昼のラジオ放送。食いしん坊だから、という理由だけでいきなりパーソナリティを押し付けられた果穂と菜月。おいしいものには目がない二人は、好物の話で盛り上がる、どこにでもいる女子高生です。

しっかり者で面倒見がよい菜月に惹かれている果穂は、番組制作を楽しみながら進めて行きます。互いに好き勝手なことを言い合うことができる仲なのに、なぜか隙を見せようとしない菜月に、観客は心の壁を感じて行きます。

文化祭を前にして、菜月は学校に来なくなってしまい、電話にもラインにも応答が無くなります。そしてある日の放課後、菜月は額に大きなガーゼをあてて姿を現します。何かを必死で伝えようとする菜月は、核心を打ち明けられぬまま逃げるように立ち去ってしまうのです。

「私が本当に大事にしているものを大事に出来ないのなら、私は私を許せません」と自分を責める果穂は、菜月を励ますために一念発起。先輩の小野と後輩の本条に支えられながら、新企画‟直撃!となりのクラスのお昼ご飯“の生放送を始めます。それが自分の声を菜月に届ける唯一の手段だったのです。

 

最近、ようやくヤングケアラーが抱える悩みと負担が、社会問題として取り上げられるようになりました。障がいを持つ家族の世話をしなければならない菜月が、必死に思いの丈を果穂に打ち明けるクライマックスのシーン、内間さんの演技には観客の心を打つ迫力がありました。まっすぐな気持ちを持つ果穂の奮闘ぶりを演じきった押足さんの役柄からは、人を思う温かい心が伝わってきました。菜月が悩んでいることを知りながら、どこまで踏み込んで良いのか躊躇してしまう果穂。しかし、大切な人を精一杯受け止めようとする健気さと、勇気を出して伝えた「菜月のことが好き!」というストレートなセリフには、人の心を射抜く力強さがありました。二人を温かい目で見守る、3年生小野役を山口さん、1年生本条役を綿貫さん、たった4人で演じた芝居となりました。舞台のセットも教室の壁と机が3つのいたってシンプルなものでしたが、演者の力量がひかる素晴らしい上演となりました。