春季発表会 ~演劇部~
6月13日(土)、14日(日)の両日、君津市民文化ホールにて「千葉県高校演劇第11地区 春季発表会」が開催されました。この発表会は地区9校が参加する、春の演劇祭です。本校演劇部は2日目最後に登場。プログラムのとりを飾る出演となりました。
上演作は生徒書きおろしの脚本による作品、『タイトル未定』。
神谷しおりは、物語を書くことが大好きな少女です。父親から「物語は人を救うんだ」と励まされ、絵本作家になることを夢見ていました。冒頭、いきなり幼いしおりに不幸が襲い掛かります。突然の火事で父親を亡くし、母親の意識が戻ることはありませんでした。周囲からの心無い憶測やうわさ、「かわいそうな子」というレッテルにしおりの心は傷つきます。そして何より、「父を死なせてしまった」という自責の念を抱えながら成長し、いつの間にか明るい物語が書けなくなっていました。
ところがある日、しおりは絵本の世界「リトルワールド」に招かれます。そこは様々なおとぎ話が錯綜する不思議の国でした。
何かが壊れ始めていたおとぎの国では、次々と不可解な出来事が起きます。亡くなったはずの父親が登場し、「(物語のなかでは)キャラクターたちは人間が決めた通りに動くただの人形だ。そんな空虚なものが救いの手を差し伸べてくれると本当に思うのかい?」と、しおりを問い詰めます。しかし、この辛辣な言葉は人が作った物語の弱点を鋭く突くものでした。人を襲うがゆえにいつも悪役として登場するオオカミは、「俺は元は(赤ずきんの)友達だった。でも俺の仲間がばあちゃん食ったのを知った途端にこのザマだよ。復讐のために仲間が何匹も殺される姿を見てきた !」と訴えます。「俺は、誰かを愛すことすら許されねえのか??俺は!!!愛したいんだよ!!!!だけど闘わなきゃいつ殺されるかわかんねえから。俺が死んじまう前に俺の事止めてくれよ!!」と叫ぶオオカミの言葉には真実がありました。
さらに、謎の集団が勾玉の封印を解き、この世を滅ぼす力を持つ闇の帝王が復活します。すると父の姿は見る間に変身し「…そう、私は神谷しおりが生み出して捨てた暗い絵本。いわばしおり自身の闇だ」と語り、自らをジ・エンドと名乗ります。 闇の力を操るラスボスの登場で、桃太郎たちも赤ずきんも三匹のこぶたも万事休す。
「物語?これこそ本当の物語さ。残酷で、理不尽で、救いがない。本当はわかってるんじゃないか?」 とうそぶくジ・エンドに、もはやなすすべはないのか?
観客席を巻き込んだアクションシーンには喝さいが送られ、不意を突くギャグは大爆笑の場面となりました。そして、脚本が秀逸でした。多様な登場人物達は個性豊かに描き分けら、テーマは最後までブレることなく作品を貫いていました。世界は善悪では単純に割り切れず、秩序の裏には不条理が潜み、勧善懲悪が完璧に成就することは困難です。それを踏まえて、なおかつ勇気をもって紡がれる物語にはきっと誰かを勇気づける何かがある、と「物語が持つ力」を最後まで訴えました。
エンディングでは、しおりが奮い立ちペンを握ります。
「とある世界に。闇をもたらす危険な存在が物語を破壊しようとしていた。それは私自身の闇。自分自身と戦うのは怖い。でも。でも私は! !私に負けたくない。これまで私を導いてくれた勇敢なキャラクターたちのためにも !! !絶対に負ける訳にはいかないんだ。おねがい、私と一緒にエンディングを作って!!!!」。この呼びかけに、しおりが作った物語のヒーローたちが立ち上がり迎えた大団円。会場からは大きな拍手が送られました。
舞台に立つ演者は21名、舞台監督や美術、照明、音響等のスタッフが9名。総勢30名が力を合わせた熱演となりました。達筆な字で部員名を紹介するテロップが、劇中で披露されました。書道部の協力によるものでした。
3年生はこの公演をもって引退を迎えることになります。けなげな主人公に胸が熱くなり、妖気を放つヒール(悪役)の眼差しに背筋が凍りました。汚れ役に徹したオオカミは最後まで一匹狼で、エールを送る観客は少なくなかったはずです。彼らの奮闘に、会場は大いに勇気づけられました。「芝居が持つ力」が輝きを放ち、舞台の幕が下ろされました。